『人を動かす』は人間関係の改善をテーマにした自己啓発本。
『道は開ける』と並びD・カーネギーの代表的な作品であり、1937年の発売から現在でも売れ続けている不朽の名作です。
『人を動かす』の名言5選
誠実な関心を寄せる
D・カーネギー『人を動かす』90頁 創元社
「人に好かれる六原則」という章の初めの項目にある言葉です。
おもに友人を得るための教訓ですが、ポイントは「誠実な」というところ。
打算や下心ではなく、純粋に「仲良くなりたい」という思いで関心をもつことが大切です。
人に好かれたいなら、まずは自分から誠実な関心を相手に持ちましょう。
私自身コミュニケーションが苦手ですが、仲良くなりたいときは、なるべく自分から話しかけるようにしています。
聞き手にまわる
D・カーネギー『人を動かす』129頁 創元社
近年コミュニケーションで重要なのは人の話を聞くことだといわれますが、この本は、それを80年前に指摘しています。
人は他人よりも自分自身に興味を持っているもの。
他人が大変な出来事にあったとしても、自分のささいな出来事の方が気になるのです。
人に好かれたいなら、相手が話をしたくなるような行動を取りましょう。
話したがっていることを考えて質問をする。
適度に相槌をうち、「聞いている」という合図を送る。
何か言いたいことがあっても話をさえぎらない。
コミュニケーション能力を伸ばしたいなら「聞き上手」を目指しましょう。
他人にものを頼もうとするときは、まず目を閉じて、相手の立場から物事をよく考えてみようではないか。
「どうすれば、相手はそれをやりたくなるだろうか」と考えてみるのだ。
D・カーネギー『人を動かす』234頁 創元社
相手が間違っているからといって怒鳴ったり非難したりして間違いを修正させてはいけません。
相手から恨みを買うだけです。
もちろん強権的な行動が必要な時もありますが、誰だってきつい言葉を浴びせられるのは嫌なものです。
相手の立場に立つとは、相手の気持ちを想像し、相手の意見を尊重し、穏便に話すこと。
そうすれば相手も余計な恨みを持たずに間違いを認めてくれるはずです。
他人の長所を伸ばすには、ほめることと、励ますことが何よりの方法だ。上役から叱られることほど、向上心を害するものはない。わたしは決して人を非難しない。人を働かせるには奨励が必要だと信じている。
D・カーネギー『人を動かす』42頁 創元社
1921年に設立された製鉄会社「U・S・スチール」。
38歳という若さで、その会社の社長になった「チャールズ・シュワッブ」の言葉です。
当時のアメリカは週給50ドル(年収2400ドル)で高給とされていましたが、シュワッブの年俸は100万ドル以上。
それほどの高給取りになれた理由は、シュワッブが人を扱う名人だったからです。
ほめられた経験が多いと自己肯定感が高くなる、といわれます。
もちろん何でもかんでもほめればいいというわけでなく、「人を動かす」には「心のこもらない上辺だけのお世辞には反発を覚える」とも書かれています。
大切なことは本心からほめること。
そうすれば相手の自尊心は満たされ、あなたのことを好きになってくれるでしょう。
わたしは、人の意見に真っ向から反対したり、自分の意見を断定的に述べないことにした。決定的な意見を意味するようなことば、たとえば、“確かに”とか“疑いもなく”などということばはいっさい使わず、そのかわりに『自分としてはこう思うのだが……』とか『わたしにはそう思えるのだが……』ということにした。
D・カーネギー『人を動かす』176頁 創元社
アメリカ建国の父といわれるアメリカの政治家「ベンジャミン・フランクリン」の言葉です。
ベンジャミンは青年だった当時、頭脳明晰で議論好きだったため、相手を打ちのめすような議論をしていました。
結果、彼の意見を聞くものは誰もいなくなってしまいました。
そんな彼に対し、友人の1人が「そんな態度では誰も君の相手をしなくなる」と説教をして、彼は改心します。
間違いを指摘するときは、「言い方」に気を付ける。
直接指摘するのでなく「自分はこう思う」という言い方にして、相手に間違いを気づかせるようにしたのです。
控えめに意見をすることで相手がヒートアップすることがなくなり、こちら側の意見を聞き入れるようになります。
また、こちらが間違っていた場合、そのことを認めやすくなります。
政治家として活躍できたのはこの方法のお陰だ、とフランクリンは語っています。
個人的に「言い方」というのは、コミュニケーションを円滑にする上で重要な要素だと思います。
「言い方」ひとつで相手を怒らせることも喜ばせることもあります。
フランクリンにならい、ぜひ「言い方」に気を付けてみてください。
『人を動かす』の感想
人間関係をよくする教訓が具体例をあげて紹介されています。
具体例は営業マンの顧客対応、部下の管理、友人関係、親子関係など。
営業で物を売るには、子供に言うことを聞かせるには、などの状況に応じた「他人を動かす方法」が書かれています。
感銘を受けたのは「人を説得する方法」の章の「誤りを指摘しない」という項目。
内容を一言でいうと「誤りを直接的に指摘するのではなく、誤りを相手に気づかせるように指摘する」というものです。
私は他人が間違ったとき、悪気なく「それは○○だよ」と指摘することが多かったのですが、この項目を読んでから気をつけています。
自己啓発本の元祖ともいわれる本書。
内容は今でこそありふれたものですが、当時は画期的だったと思います。
ありふれているというのは、裏を返せば、耐用年数の長い普遍性のある内容だということ。
だからこそ発売から80年たった今でも売れ続けているのです。
全て実践する必要はありませんし、自分に合わないのであれば無理に参考にする必要もありません。
実際「これはちょっと…」と思う教訓もありますし、今の時代にあってない箇所もあります。
それでも『人を動かす』と『道は開ける』の2冊は、自己啓発本として読む価値はあります。
このブログでも他の自己啓発本を紹介していますが、読むべき自己啓発本はと聞かれたら間違いなく『人を動かす』『道は開ける』と答えるでしょう。
人間関係を円滑にしたい方はぜひ読んでみてください。
『道は開ける/デール・カーネギー』の感想 悩みの解決に特化した名著